湖畔のひとりごと

スイスでの生活で気づいた事などを綴っています

対等な関係

スイスでスーパーやレストランへ行った際、日本と大きく違うのは従業員が全てにおいてお客様ファーストではないということ。というか、むしろ日本だけが特別なのであって、他の海外各国でもどこも似たようなものだと思う。

例えばスーパーでは、従業員が品物をせっせと陳列している場合、買い物客がその付近の品物を取りたくても取れないという事がある。日本だったらその従業員がその状況に気づいた場合はすぐに場所を譲ってくれるだろうが、こちらでは買い物客は従業員の仕事の邪魔をしないように待つか、後でまたその場所に戻って来る(声をかける人もいるのでしょうが、私や夫Mはそうしている)。

先日ゴルフ場に併設されたレストランで食事をした際、Mがウェイターにお会計を頼んだ。スイスのレストランはテーブル会計が普通のため、ウェイターがテーブルまで大きなお財布やクレジットカードリーダーを持ってくる。ここはよく行くお店なので、Mは先にお金をチャージしてあるチップを持っていていつもそれで支払いをしているので、彼をよく知るウェイターはお会計を頼むとそのチップを受け取りに来るのだが、そのウェイターはまだ新人(といっても定年退職して趣味で働き始めたと言っていたそれなりのお歳の方)。お会計セット一式を持ってやってきた。Mが「このチップで払いたいんだけど」と言うと、店内に響く大きな声で文句を言い始めた「だったら先にそう言ってくれればいいじゃないか!(という内容だと思う」そしてMも恐縮しきりで謝る。日本だったらまず見られない光景だが、このウェイターの態度は彼が特別横柄だという訳でもない。

他のレストランでMの家族と一緒に食事をした際は、我々の方が先に注文も済ませたのに、後から来た隣のテーブルにはどんどん食事が運ばれて来る。我々はサラダが来たきりずっと待ちぼうけ状態。そのあいだ家族間では「なんでここだけ食事が来ないの?」「私達と同じ注文の品なのに隣のテーブルにはもう来てる!」とひそひそ話は飛び交っているのだが、ウェイターにその文句は言わずにひたすら食事がサーブされるのを待っていた。

更に他のお店でスパゲティーを注文した際、出て来たのが全く味のしない代物。基本的に薄味が好きなので大抵は我慢できるのだが、さすがの私も塩と胡椒を振りかけないと食べられなかった。言葉に不自由していなければ文句の一つでも言いたいところだったが、この時もMは「イタリアンレストランじゃないから仕方ない」の一言。そして食後チップも払っていたので思わず「スイスでは食事が明らかにまずくてもチップを払わなくちゃいけないの??」と聞いてしまった。すると、「彼(ウェイター)が作ったわけじゃないからね。サービスは普通だったから」

要はお客様もお店で働く人も対等な関係なのだ。だからお客に特に愛想をふりまく必要もないし、どんなお店でも大抵入店したお客からお店の人に「こんにちは」、そして出て行く時も「また会いましょう(ありがとうの意)」と一声かける。どちらかというとそのお店の空間にお客の方がお邪魔しているという感覚だろうか。

日本では当たり前の『お客様は神様です』的な態度はまず望めないが、たまに見るモンスタークレーマー問題などはあまりなさそうだ。そしてこの対等な関係は従業員のストレスも少ないだろうし、お互いが節度を持って接することができる気がする。