湖畔のひとりごと

スイスでの生活で気づいた事などを綴っています

スイス国内列車旅行:②-2サンモリッツ

約6時間半のグレイシャー・エキスプレスの旅の終着点、サンモリッツに到着したのは午後4時半過ぎ。グラウビュンデン州の中でも標高1,850mのサンモリッツを含むエンガディン地方は、日々の天気予報を見ていても飛びぬけて気温が低い。真冬の格好をして駅に降り立った。

駅の目の前に広がる湖はまだ半分凍っていた。このサンモリッツ湖では、真冬には完全に凍った湖上で雪上ポロや、スイスで一番賞金の高いホワイトターフ、雪上競馬が行われるそうだ。さすが19世紀にイギリス人のリゾート地として発展していっただけあって、イギリス文化が受け継がれているようだ。

駅から見るサンモリッツ湖

サンモリッツの街は駅からは見上げた所にある。駅前にはスイスで初めて見た客待ちをするタクシーが何台も並んでいる。さすが世界中のセレブが集まるリゾート地。でも本当の富豪は2駅お隣のサメダン空港にプライベートジェットで降り立つそう。世界が違いすぎてもう想像もできないが、一般庶民の我々は、長時間列車で座ったままだったこともあり、バスも使わずに歩くことにした。スイスで生活するようになり坂道の存在には慣れたが、ここはどれだけの急坂を上るのかと思ったら、何ととっても広くて立派な空間の中に、3段の長~いエスカレーターがあり、楽々と街に到着した。

駅からこの地下道を抜けて

長いエスカレーターで街に簡単に到着(これは上から撮っています)


既に冬季営業が終わり閉まっているホテルも多かったが、その一つの5つ星ホテルを横目に我々のホテルに到着。関東平野で生まれ育ち、上りの坂道を見ると萎える私に慣れて来た夫Mが「坂道登るの嫌がるからなるべく駅から近いホテルにしておいたよ」と。ダンケ!!

ホテルチェックイン後、まだ夕食には早かったので街に出る。高級リゾート地だけあってなるほど高級ブランド店はいっぱいあるが、街自体は小さくてそんなに見るところもない。そして、高級、高級っていうけど、いわゆるセレブ、VIP、富豪と言われる人達はどこに泊まるのか?M曰く、もちろんそういう人達の社交場として有名な5つ星ホテルもあるけど、彼らは街から見ると森にしか見えないもっと標高の高い場所に別荘を持っているのだそうだ。試しに坂道をしばらく登っていくと、確かに家がどんどん大きくなっていく。ある家には車用のエレベーターも設置されていた。

サンモリッツの斜塔。イタリアのピサの斜塔と同程度傾いているのだそう。

サンモリッツの街中で見かけて一番びっくりしたのは無料の公衆トイレ。他の街ではまず見かけない。巨大エスカレーターといい無料公衆トイレといい、サンモリッツは自治体の財源が豊かなのだろう。サンモリッツへ旅行される方、トイレの心配はご無用です!

街なかの公衆トイレ

中もきれい


夕飯のためにお昼は軽めのサンドイッチにしたのだが、何せ運動量が少なく大してお腹も空かなかったので、お店をわざわざ探すのはやめてホテル内のイタリアンレストランを予約した。イタリアとの国境に近いこともあり、イタリア人もいっぱい存在するサンモリッツ。ピザは巨大でとても美味しかった。しかし、レストラン内ではほとんどのお客さんが英語で会話をしていた。観光客は英語圏内からの人が多いようだ。

翌朝、まずはバスで隣町のジルバプラーナへ。街といってもほんの100m程のメインストリートにぽつんぽつんとお店があるぐらいで、サンモリッツのような賑わいは全くない静かで小さな街だった。

ジルバプラーナの教会前広場

サンモリッツに戻ってセガンティーニ美術館へ向かう。偶然にもこの旅行に出る少し前、よく視聴している山田五郎さんのYouTube「オトナの教養講座」のセガンティーニの回を見ていたので、今回は記憶もフレッシュなまま楽しむ事ができた。以前倉敷にある大原美術館で見た『アルプスの昼間』を思い出しながら、セガンティーニ美術館の同題作のブルーの美しさを堪能した。作品数は多くは無いが、日本語のオーディオガイドもあり、ゆっくり見て回ることができて大満足だった。

セガンティーニ美術館

この時点でまだ朝食からそんなに時間も経っておらず、この後はリヒテンシュタインの首都ファドゥーツへまた電車で約3時間の移動なので、オードリー・ヘップバーンも訪れたという街中のハンセルマンでパンを購入して駅へ向かった。

美しい佇まいのハンセルマン

ちなみに、旅行から戻ってまた視聴した「オトナの教養講座」のエル・グレコの回で、『聖マウリティウスの殉教』を紹介していた。聖マウリティウスが殉教したのがこの地なので、街の名前がサンモリッツ(St. Moritz)となったそうだ。

この後はリヒテンシュタインのファドゥーツへ続きます。