湖畔のひとりごと

スイスでの生活で気づいた事などを綴っています

初ヨーデルコンサート

スイスと聞いて連想するのは、アルプスの山々、綺麗な湖、牛や羊やヤギがのんびりと草を食む牧草地の風景、それとも高級腕時計?人それぞれだろうが、ヨーデルを挙げる人もいるかもしれない。

スイスに住んで約2年半、昨日初めてそのヨーデルをライブで聞く機会があった。専門の放送局があるのかもしれないが、現地でラジオをつけていてもヨーデルを聞くことはまずない。たまたま行けなくなった人から回ってきたチケットがあったので行ってみることにした。

会場となったのはブリエンツ湖畔の村、ギースバッハに建つグランドホテル。ここはNetflixのドラマ「愛の不時着」のロケ地の一つで、元々観光地ではあったものの、近年はアジアからの聖地巡礼観光客でより賑わっている。森の中に建つホテルからはブリエンツ湖が眼下に広がり、すぐ横にはギースバッハ滝が流れている。森からはα波、滝からはマイナスイオンを全身に浴びて思いっきりリラックスできる最高のロケーション。

グランドホテル・ギースバッハ

ホテルのすぐ横をギースバッハ滝が流れている

ホテル内の窓から見えるブリエンツ湖

日本の民謡と同じでヨーデルも今どきの若者には人気が無いのか、観客の年齢層は高かったが、コンサートが始まると手拍子はもちろん、その場で立ってリズムを取る人あり、演者と気軽に会話をする人あり、とてもアットホームな雰囲気。

バンド名は『オシュス・ディー・ドリッテン』日本語に訳すと『オシュ家の三世代』で、文字通り3世代続いているファミリーバンド。ヴォーカルとMCを担当する長女のメラニーさんを中心としている。彼女の声は日本の歌手の大黒摩季さん風でとってもきれいなヴィブラート。3世代続けるといっても、それが可能な強い声帯と素晴らしい歌唱力に恵まれた才能が不可欠な訳で、それを生まれ持った彼女の歌を聴きながら、私にはある意味奇跡を目にしているように思えた。

オシュス・ディー・ドリッテン

ヨーデルはアルプス山麓の牧童が仲間と呼び交わす独特の裏声が元になっているそうだが、歌を聴いていると、湖を見下ろす広々とした牧草地帯で楽しそうに歌い踊るスイスの人達の姿がありありと目に浮かんだ。日本で例えるならば田植え歌のようなものだろうか?

行く前は、「眠たくなったらどうしよう?」とちょっと心配していたが、そんな心配は全く必要なかった。ヨーデルを心から楽しめた自分が、前よりもほんの少しだけスイスに近づけた気がした夜だった。