日本に住んでいたとき、春は私にとって最悪の季節だった。
花粉症という言葉が世間一般に広く知られる前から症状に悩まされ、マスク、飲み薬、目薬は常に手放せず、お花見にも全く縁がなかった。そもそも寒がりでお酒の飲めない私にとっては、まだ底冷えのする季節に花粉の舞う野外でお酒を飲むお花見に楽しい要素など一つも無かった。
ところが、スイスに来てからは春が大好きになった。寒くて長い冬から一気に草木花の芽吹く季節。グレーや白だった景色に鮮やかな黄色、紫、ピンク、赤などの色が増えていく。小鳥のさえずりも日に日に音量が増して騒がしいぐらいだ。
スイスでも何かしらの花粉は舞っているが、まだ私の体内でのマックス容量には達していないためか、目の痒みぐらいで薬を必要とするまでには至っていない。う～ん、なんて快適なんだ！！
スイスにお花見の習慣はないようだが、お天気の良い日には、芝生の上でピクニックをしたり、寝転んだり、読書をしたり、皆思い思いに春を楽しんでいる。桜もあるので、桜の見える所でピクニックをすれば、それは立派なお花見になるとも言えるのかも。
我が家の敷地内には前の住人が残していってくれた花々が次から次へと咲いてくれるので、その恩恵にあずかりながら、春を楽しんでいる。まさか自分が春を好きになる日が来るとは想像もしていなかったが、人生には何が起こるかわからないものだ。
