湖畔のひとりごと

スイスでの生活で気づいた事などを綴っています

建築規制

コロナ禍で滞っていた建築工事。物流が動き出して資材の入手が可能になったためか、最近ご近所は建築ラッシュだ。あちらこちらに巨大なクレーンが出現し、忙しそうにアームを動かしている。スイスでは一般住宅の建築現場でもこのクレーンが使われている。資材をぶら下げて動くアームの下を通る時はいつもちょっと不安になり、足早に通り抜けている。

巨大なクレーン

私の住むベルン州では、家をリノベーションしたり、新築する際は、『ここにこの高さでこの大きさの建物を建てます』ということを近隣に周知させるために、このような棒を2か月間建てる必要がある。

近隣の住人に周知するために建てられた棒

その期間内に、賛同しかねる人はゲマインデ(地方自治体)に申し出ることができる。日照や景観に影響がある人などは反対ができるわけだ。

先日我が家の近所でもこの棒が建った。我が家からの景色にも影響がある高さにリノベーションしたいようだ。夫のMが「今よりも随分高くなるから、うちからの景色も狭まるし、本当にあの高さの建物を建てて良いのか疑わしいから反対してみる」とクレームを入れた。

後日、その建物の持ち主がMを訪ねてきて、同情を買うような話をしてクレームを取り下げてもらえるよう交渉したり、最後には「いくらか払うから」というような事も言ったそうだ。Mは「お金が欲しいわけではない。本当に建築規制に沿っているのか確認したいだけだ」と伝えてお引き取り願った。

そしてその後、ゲマインデや他にクレームを出した人達などが実際に我が家を訪ねて来て、どれだけ影響があるのかを確認して行った。

この後、もしもこの案件がゲマインデで決着がつかない場合はベルン州へ渡るようだ。この間持ち主は工事に着手できないので、損害を被る場合もある。だから持ち主はMを買収しようとしたのだ。

棒を建てて周知する方法の他に、建築プランを見せながら自分で近隣の家を周り、同意のサインをもらうというやり方もある。我が家のお隣さんはこの方法で池を造りたいとサインを求めてきた。Mが「うちとの境界に近すぎる気がするから、ゲマインデに確かめてからにしよう。でもこれはある意味駆け引きなんだよね。今回反対すると、将来うちが何か手を加えたい時に反対される可能性があるからね」

自分の権利や主義主張が強いお国柄、皆言うべきことは言うのが当たり前。でも時には駆け引きも必要なようだ。

かくしてお隣にできた池からは、春になるとカエルの大合唱が聞こえてくるようになり、そちら側の窓はうるさくて開けられないようになった。う~ん、駆け引き失敗だったか・・・?